これまで各企業で開催されてきたインターンシップですが、2023年度以降にあり方が変わります。
従来よりも厳格に要件か定められ「学生のキャリア形成支援」として4つに分類されることとなりました。
これにより、学生が参加しやすい体制が整い、自身のキャリア形成をする上で重要な指針となるでしょう。
企業にとっても、インターンシップで得た学生情報を採用活動開始後に活用できることとなったため、学生・企業の両方において重要視されています。
今回は、新卒の就活生へ向けた求人紹介エージェントの「JOBマッチ」を担当する私が、インターンシップの4類型のうちの専門活用型インターンシップについて解説します。
【就活の基礎知識】インターンシップの4類型とは
従来のインターンシップは、学生が自分の将来を考えるにあたって、興味のある業界や企業で実際に働くことができる機会を提供し、学生のキャリア観を醸成するほか、様々な企業にとっても今後活躍する人材を育てるという非常に重要な役割を担っていました。
しかし、これまでのインターンシップを通じて得られた学生の情報を採用活動に利用することは認められていませんでした。(「インターンシップ推進にあたっての基本的考え方(以下三省合意)」)
学生にとっても、インターンシップに参加する企業によって内容や期間が異なるため、就活に対する混乱や焦りを招く一因となっていたと考えられます。
そこで2022年4月に「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」で、大学生等のキャリア形成支援に係る取組を類型化するとともに、一定の基準を満たしたインターンシップで企業が得た学生情報を、広報活動や採用選考活動に利用できるよう合意が結ばれました。
これを踏まえて三省合意も改正され、令和5年度以降のインターンシップ等のキャリア形成支援に係る取り組みを4つに類型化しました。
- タイプ1 オープン・カンパニー
- タイプ2 キャリア教育
- タイプ3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
- タイプ4 高度専門型インターンシップ(試行)
特に重要となるのが、タイプ3「汎用的能力・専門活用型インターン」です。
今後、企業はタイプ3または4のインターンシップで得た学生情報を採用活動開始以降に活用することが可能になるため、これを認識した上でインターンシップに参加することが大切になります。
汎用的能力・専門活用型インターンシップの特徴
汎用的能力・専門活用型インターンシップは、企業単独、大学が企業あるいは地方自治体などと連携して実施するプログラムのことです。
汎用的能力活用型インターンシップと専門活用型インターンシップの2種類に分けられます。
- 汎用的能力活用型インターンシップ…学生の適性や汎用的能力を重視
- 専門活用型インターンシップ…専門性を重視(事務系や技術系)
主な実施内容
汎用的能力・専門活用型インターンシップでは、学生の参加期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てます。
就業先でテレワークが常態化している場合にはテレワークも「職場」とします。
具体的な内容としては、事業所・研究所・工場などでの業務体験や営業同行などが体験できます。そのほか、企業説明会や社内見学、ワークショップやグループディスカッションなどを行います。
また、就業体験では職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後に学生に対してフィードバックを行います。
基本的に就業体験は無給ですが、社員と同じ業務・働き方をする場合には労働関係法令の適用を受けるため、雇用契約を締結した上で有給となります。
学生の参加期間と実施時期
汎用的能力活用型は5日間以上(短期)、専門性活用型は2週間以上(長期)実施しなければならないと要件で定められています。
実施時期は、学業との両立の観点から「学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間」としています。
夏休みや冬休み、試験休み等を利用してインターンシップに参加できるため、「インターンシップに時間を取られて学業に時間を割けない」といった事態を避けることができるでしょう。
主な目的
汎用的能力・専門活用型インターンシップの実施目的を学生側・企業側それぞれから解説します。
学生側の目的
汎用的能力・専門活用型インターンシップに参加することにより、自身のキャリアプランに照らし、自身の能力を実務体験を通じて見極めることが目的です。
興味のある分野や志望する企業に実際に携わることにより、漠然とあったイメージから実体験に基づくリアルな適性を判断することができるでしょう。
また、早期のインターンシップ参加は長期スパンでキャリアを考える良い機会となります。
企業側の目的
汎用的能力・専門活用型インターンシップを実施することにより、企業は採用選考における評価材料を取得することが目的です。
また、採用活動開始前に自社や業界についての理解を深めてもらうことによって、採用活動時に理解の深まった学生と出会うチャンスを広げることもできるでしょう。
専門活用型インターンシップの3つのメリット
従来のインターンでは「5日間以上の就業体験」としか定めがありませんでしたが、学業との両立の観点から5つの要件からなる基準を新たに定めました。
これにより就業体験が確約され、社員からフィードバックをもらえるなどといったメリットが生まれました。
以下で詳しく解説します。
就業体験が確約されている
汎用的能力・専門活用型インターンシップでは、必ず就業体験ができます。
というのも、従来のインターンシップでは厳格な取り決めがなかったため、「会社説明会だけ」というものがあったのも事実です。
今回定められたタイプ3のインターンシップでは、参加日程の半数を超える日数を就業体験に充てなければならないとしているため、汎用的能力活用型なら3日以上、専門活用型では1週間以上の就業体験をすることができます。
実際に働く社員からのフィードバックを得られる
自分の考え方や行動に対して、すでに社会に出て活躍している社員からフィードバックを得られることもメリットと言えます。
優れている点やインターンシップ先の企業にマッチする部分があれば、今後の採用選考でアピールすれば効果抜群なのは間違い無いでしょう。
反対に、さらに身につけた方が良い点や改善すべき点があれば、自分を客観視する良い機会となり、自身の選考対策に生かすことができます。
長期休暇中に参加できる
今回新たに定義された汎用的能力・専門活用型インターンシップでは、実施時期を「学部3年・4年ないしは修士1年・2年の長期休暇期間」としているため、夏休みや冬休みなどの長期休暇を利用して参加することができます。
長期休暇を利用して参加できるということは、学業への支障がなく、就活と学業が両立ができるというメリットがあります。
ただし、インターンシップ参加のためのエントリーや選考は大学の授業期間に行う必要がある場合があるため事前に確認しましょう。
参加する際の注意点【就活準備】
汎用的能力・専門活用型インターンシップは従来のインターンシップより細かく要件が設定されているため、学生や企業の双方に大きなメリットがあります。
しかし、参加にあたっていくつか注意すべき点もあるため、ここでしっかりと把握しておきましょう。
人気の業種や企業への参加が難しい場合がある
汎用的能力・専門活用型インターンシップに応募すれば必ず就業体験ができるとは限りません。
従来のインターンシップでは、1dayのプログラムなどがあり複数日程開催されていたことから多くの人が参加することが可能でした。
しかし、新たに定義された汎用的能力・専門活用型インターンシップでは、短期や長期の日数が定められているほか、就業体験が必須なため少人数規模での開催が予測されます。
そのため、多くの人が集まる人気業種や企業への応募倍率が高まり、参加にあたってエントリーや選考が必要になることも考えられるでしょう。
もちろん、汎用的能力・専門活用型インターンシップの選考に落ちてしまうと、インターンシップに参加することはできませんが、採用活動開始後の本選考に参加できない訳ではありません。
インターンシップに参加できなかった場合でも、肩を落とさずに本選考で再度チャレンジするという向上心を持って選考対策を行うことが重要です。
5日間以上の参加期間を確保する必要がある
汎用的能力・専門活用型インターンシップは5日間以上開催されます。
短期留学や部活動の大会を控えている方、アルバイト先のシフト調整が必要な方は注意が必要です。
スケジュールが合わずに断念するといったことは大変もったいないため、応募前に必ず全日程参加可能かどうかを確認してください。
複数の企業のインターンシップを考えている場合も同様です。
記事まとめ
この記事では、汎用的能力・専門活用型インターンシップの特徴やメリット、参加にあたっての注意点について解説しました。
従来のインターンシップより実施内容や期間・時期が細かく取り決められ、参加する大学生にとっては、自身のキャリアプランを形成するための良い機会となるでしょう。
もし希望する汎用的能力・専門活用型インターンシップに参加できなくても、本選考にはエントリーできるため、その企業が提供するその他の活動に参加し、理解を深めるのも一つの手です。
あくまでも就職活動のためのキャリア観を形成するための補助的役割と考えましょう。
自分の納得のいく内定先を獲得するため、汎用的能力・専門活用型インターンシップの他にも採用の本選考のための対策もしっかり行なっていくことが大切です。