就活を始めて数ヶ月が経ち、内定がなかなかもらえず不安になっている大学生がいるのではないでしょうか。そんなとき、「就職浪人」という言葉が頭をよぎる方は少なくないでしょう。
就職浪人として就活する際、新卒で就活する場合と比べて、経験の活かし方のポイントや注意すべき点があります。本記事では、就職浪人を選択することを考えている大学生やすでに就職浪人である方に向けて、就職浪人の定義や割合、就職浪人のメリット・デメリットを解説したのちに、就職浪人の経験を就活で活かすためのポイントと、就活以外の選択肢を紹介します。
就職浪人の定義と割合
「就職浪人」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。また、就職浪人に近い言葉の「就職留年」とはどのように違うのでしょうか。ここでは、就職浪人と就職留年の違いや就職浪人の割合、就職浪人をすると新卒扱いなのか既卒扱いなのかといった、就職浪人の定義や就活における現状について解説します。
就職浪人と就職留年との違い
国語辞典によると、「就職浪人」とは、「卒業年度内に就職先が決まらず、卒業後に既卒者として就職活動を継続する人」です。新卒と呼ばれる期間内に就職先が決まらなかった方や、大学生の間に内定をもらったものの承諾せずに大学卒業後に再度就活をする方があてはまります。
また、就職浪人に類似する言葉である「就職留年」は、「卒業年度内に就職の見通しが立たない学生が、次年度も新卒者として就職活動を継続するために、あえて留年すること」と定義されています。
つまり、就職浪人は大学を卒業している状態であるのに対して、就職留年は大学を卒業していない状態であることが、両者の大きな違いです。ただし、大学に在学しているかどうかによって、就職浪人と就職留年には異なるメリットとデメリットがあります。就職浪人におけるメリットとデメリットは後述します。
就職浪人は新卒扱い?既卒扱い?
国語辞典の定義によれば就職浪人は既卒者ですが、実際の就活において企業は就職浪人をどのように扱うのでしょうか。結論から述べると、企業次第であると言えます。ただし、厚生労働省は3年以内の既卒者は新卒枠で応募受付することを指針として、企業に示しているため、大学卒業から3年以内の就職浪人であれば「新卒扱い」として採用している企業もあります。
既卒扱いとして就活する場合、一般的には就職浪人を選択した理由を企業から尋ねられる可能性が高いです。企業の人事担当者が就職浪人に対してネガティブなイメージを抱く場合もありますが、困難な状況をどのように乗り越えたのかや何を学んだのかを伝えることで、人柄や能力をアピールできる場合も大いにあります。応募書類の作成や面接対策で、これらの点を踏まえて念入りに準備しなければなりません。
就職浪人をすることを検討している大学生は、大学在学中に新卒として就活をするか、よりよい就職先の決定を目指して就職浪人を選択するか、志望する業界や企業の募集要項を熟読し、慎重に検討することをおすすめします。
就職浪人の割合
就職浪人を選択する人は、どのくらいいるのでしょうか。文部科学省の調査によると、令和3年3月卒の大学生について、大学(学部)卒業後の進路は次のような割合となっています。
- 就職:74.2%
- 大学院等への進学:11.8%
- 就職でも進学でもないことが明らか:9.6%
「就職でも進学でもないことが明らか」である人は、進学準備中や就職準備中などと回答した人の割合です。そのため、就職浪人は9.6%よりも少ないことがわかり、一般的には就職浪人を選択することは少数派であると言えます。裏を返せば、就職浪人を選択してでも自分が働きたい業界や企業に正社員として採用されることを目指している人や、福利厚生など自分が望む条件の企業で働くことを目指す人が一定数いることがわかります。
就職していない人のメリットは?時間を有効活用しよう
新卒枠で就活をする大学生が多いなか、「就職浪人は不利になるのでは…」と不安になる方は少なくありません。しかし、就職浪人として就活するメリットを押さえておけば、新卒の大学生よりも深みのある内容で書類作成や面接対策を有利に進めることができます。ここでは、就職浪人として就活する際の3つのメリットを解説します。
就活に時間を多く使える
就職浪人は、現役の大学生に比べて、学業に時間を割く必要がないためより多くの時間を就活にあてることができます。業界分析や企業分析、「本当に自分がやりたいことや実現したいこと」などの自己分析に時間をかけて取り組めるため、履歴書などの応募書類の作成や面接の対策を念入りにおこなうことができます。その際、モチベーションを維持できるように計画的に準備を進めることがポイントです。
また、人によってはアルバイトをしながら就活をすることになるでしょう。その場合、志望する業界でアルバイトをすることを検討してみてください。アルバイトでの経験や経験を通して考えたことを就活時にエピソードとして用いることができます。
大学在学中の就活の経験を活かすことができる
就職浪人のほとんどが、大学在学時に就活を経験しているでしょう。在学中の就活において良かった点や反省点を振り返り、それらの点を活かして就活に臨めることは、就職浪人ならではのメリットです。就活の流れやビジネスマナーなどを事前に把握しておくことで、精神的な余裕も生まれます。
多くの人からアドバイスをもらうことができる
就職浪人をする方の同級生は、数年早く社会人になっています。自分よりも一足早く就活を成功させた友人や知人から就活に関するアドバイスをもらえることも、就職浪人で就活をする場合のメリットの1つです。
自身の経験だけでなく、身近な人の就活時の経験も活かした戦略を考えることで、よりよい準備をすることができるでしょう。また、内定をもらった後の流れや入社してからのエピソードを聞くことで、就活に対するモチベーションアップも期待できます。
就職浪人は不利?就活時のデメリット
ここまでメリットを解説しましたが、就職浪人が就活においてどういった点で不利になる可能性があるのかも知っておきたいですよね。ここからは、就活が不利になる就職浪人の4つのデメリットをご紹介します。
選考でネガティブなイメージをもたれることがある
企業が採用活動をする際、純粋な新卒の大学生と、就職浪人や就職留年をしている方とでは、現役の新卒を採用したいと考えるのが一般的です。その理由は、就職浪人や就職留年をしている方よりも、純粋な新卒の大学生のほうが「計画性や実行能力が高く、入社後に仕事を任せやすい」と印象付けやすいからです。
就職浪人の人を新卒枠として選考する企業に応募する場合でも、このような印象をもたれる可能性があることを念頭に置いて、就活の準備をして損はありません。
就職浪人の期間に取り組んだことが問われる
とくに面接では「なぜ就職浪人を選択したのか」「就職浪人の期間をどのように過ごしたか」といったような質問を受けます。ここでの受け答えがネガティブなイメージを払拭するかどうかにつながるため、こうした質問に適切に答えるための準備をしなければならない点が、就職浪人のデメリットです。
就職浪人をしている期間に、アルバイトやボランティア活動、資格取得など就活につながる活動に取り組み、その動機やその経験から得られたことなどエピソードを整理してまとめることで、自身のアピールポイントにつなげることが大切です。
大学のサポートを受けにくい
就職浪人と就職留年の違いとして、大学に在学しているかどうかというポイントがありました。就職浪人の方は大学を卒業しているため、学費がかからないというメリットがある反面、キャリアセンターなど、大学からの就活に関するサポートが受けにくいことがデメリットです。在学中よりも業界や企業の情報が得にくくなったり、応募書類の添削や面接対策を受けられなくなったりします。
孤独感や焦りを感じる人もいる
就職浪人になったことで、共に就活をする仲間がいないと感じて孤独感を感じたり、同級生よりもライフステージが遅れていると感じて焦ったりする人も多くいます。就職浪人になると精神的に追い込まれる可能性がある方は、友人や家族など身近な人にこまめに相談をしたり、転職エージェントを利用して就活の専門家にいつでも頼れる状況をつくったりしておくことが大切です。
就職浪人の経験を就活で活かすためのポイント
就職浪人になってから就活をする際は、就職浪人のメリットもデメリットも理解したうえで、就職浪人になった経験を活かして戦略的に準備を進めましょう。ここでは、就職浪人の経験を就活で活かすために押さえておきたい4つのポイントを紹介します。
業界分析・企業分析・自己分析をやり直す
大学在学中の就活で、業界分析や企業分析、自己分析をしている就活浪人の方でも、それぞれやり直しましょう。大学生時代の就活が上手くいかなかった原因は、分析が不十分だったことが一因かもしれません。業界や企業の動向は毎年変わっていくため、就活浪人になってからの社会情勢も踏まえて改めて分析して、情報収集をしましょう。
また自己分析は、自分の強みや人柄、就活の軸、志望する業界や企業などと自分の強みなどが合っているかも見直すことが大切です。就活浪人として過ごした期間に得た経験や価値観もあるでしょう。就活の軸が大学生時代のものと変化していることもよくあるので、就職浪人をした理由や、就職浪人をしている間に経験したことを棚卸して、「自分がやりたいこと」や「どんな業界や企業、業種、職種で働きたいか」などを、改めて整理することをおすすめします。そうすることで、応募書類や面接で話す内容として落とし込みやすくなります。
業界経験をする
就職浪人をしている間に、志望する業界でアルバイトやインターンなどとして働くと、就活はもちろん、就職後にも活きる経験を得ることができます。就活においては、自身が想像していた内容であるか、やりがいを得られるかなどを確かめることができ、面接などで業界経験があることをアピールすることができるでしょう。働いてみて想像と違った場合は、別の業界を検討するきっかけにもつながります。
資格を取得する
就職浪人になると多くの場合、就活以外のことにもまとまった時間を割くことができます。その時間を志望する業界や企業で活かせる資格取得にあてることも良い手段の1つです。たとえば、不動産業界であれば「宅地建物取引士」という資格は、取得していなくても選考を受けることはできますが、取得していればアピールポイントの1つになるだけでなく、業務の幅が広がったり待遇が上がったりすることがあります。
また、取得を目指している場合は、「●●(資格名)を取得に向けて勉強中」と履歴書に記載したり、面接で挑戦する意欲を伝えることもできるでしょう。業界分析や企業分析の一環として、活かせる資格を調べて、資格取得に挑戦してみることをおすすめします。
転職エージェントや既卒向けのサービスを活用する
デメリットで紹介したとおり、就職浪人の方は応募書類の添削や面接対策をしてもらうことが難しくなったり、就活をしている間に精神的に苦しくなってしまう可能性があります。それらを解消できるのが転職エージェントです。転職エージェントとは、転職者と企業をマッチングするサービスや人のことで、 キャリアカウンセラーによる面談や書類添削、面接対策などを無料で受けることができます。
非公開求人にも出会える転職エージェントが多数あるため、活用することで就活の幅が広がります。新卒や第二新卒、既卒に特化したエージェントもあるため、「活用してみたい!」と思った方はいくつかのエージェントに登録し、自身に合ったエージェントを探してみるとよいでしょう。
また、ハローワークを利用する手もあります。地域の企業はハローワークのみに求人を掲載していることもあるため、自分の住んでいる地域や地元の企業から就職先を探したい場合は、各地域のハローワークに足を運んだりインターネットで検索したりしてみてください。さらに、ハローワークには職業訓練という制度があり、条件にあてはまれば資格を取得できる講座を受講することができます。
まとめ
就職浪人になることを選択する人は少数であるため、就職浪人として就活する際は、企業からネガティブなイメージをもたれたり、精神的に苦しくなったりすることがあり、決して楽な選択であるとは言えません。
しかし、時間をかけて企業分析や自己分析に取り組み、業界経験や資格取得など新卒の大学生は持つことができない武器を持って、就活に挑むことができます。就職浪人をすると決めたら、時間を有効に使い、身近な友人や家族の力を借りて、転職エージェントなども上手に活用することで「就職浪人をしたから満足のいく就活ができた」と胸を張って言える就活にすることができるでしょう。